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ある日、聞いたことのない会社から手紙が届く。「〇〇債権回収株式会社」と書かれていて、何年も前の借金について支払いを求めている。金額には利息や遅延損害金が付いて、借りた覚えのある額よりずいぶん大きくなっている。
こうしたご相談をいただくことがあります。まず思われるのは、「この会社は何なのか」「詐欺ではないのか」「今さら払わないといけないのか」ということだと思います。
この記事では、まず届いた手紙が本物かどうかをどう確かめるか、そのうえで消滅時効の考え方と、援用の手続や費用をご説明します。
1. 知らない会社から届くのは、なぜか
借金が別の会社へ譲渡されていることがあります
借入先が倒産したり、回収を専門とする会社へ債権をまとめて譲渡したりすることがあります。譲渡を受けた会社が請求してくるため、借りた覚えのない会社の名前で手紙が届くことになります。
債権回収会社(サービサー)は、法務大臣の許可を受けた株式会社に限って営むことができる業務です。許可を受けた会社の一覧は、法務省のウェブサイトで公表されています。手元の手紙にある会社名がその一覧にあるかどうかは、ご自身で確かめられます。
実在する会社の名前をかたる請求もあります
一方で、実在する債権回収会社と似た名前を使い、身に覚えのない請求をする例があります。法務省も注意を呼びかけています。次のような特徴が挙げられています。
出会い系サイトの利用料など、心当たりのない名目になっている
中身が見える状態のはがきで届く
連絡先として携帯電話の番号が書かれている
「法務省認可特殊法人」など、実在しない名称を名乗っている
法務省は、心当たりがなければ支払わないこと、給与を差し押さえるといった文言に慌てないこと、相手に連絡をしないこと、書類は保管すること、悪質な場合は警察に相談することを挙げています。
判断がつかないまま相手に電話をするのは避 けてください。架空の請求であれば連絡先を知らせることになりますし、本物であった場合は、後で述べるとおり、やり取りの内容によって時効が振り出しに戻ることがあります。どちらの場合も、まず連絡しないことが安全です。
2. 期間が過ぎても、それだけでは支払義務は消えません
請求が本物で、借入れにも心当たりがある場合、次に問題になるのが消滅時効です。
ここが最も誤解の多いところです。時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないとされています(民法145条)。年数が過ぎれば自動的に借金が消える、という仕組みではありません。
援用とは、「時効が完成しているので支払いません」と相手方に伝えることです。これを伝えて初めて、支払義務が消滅したものとして扱われます。期間が過ぎていても、援用しないまま放置していると請求は続き、裁判を起こされることもあります。
3. 期間は5年か10年か
債権は、次のいずれかの期間が過ぎると、時効によって消滅するとされています(民法166条1項)。
債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間
権利を行使することができる時から10年間
貸金業者やクレジットカード会社からの借入れは、契約書に返済期限が定められており、相手方は期限が来たことを当然に知っています。そのため、実際には5年で考えることが多くなります。
2020年4月1日より前に借りた場合
民法は令和2年(2020年)4月1日に改正法が施行されましたが、施行日より前に生じた債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によるとされています(平成29年法律第44号 附則10条4項)。古い借金では、改正前のルールで判断することになります。改正前は、相手方が会社かどうかで期間が異なる仕組みでした。
起算点は「最後に返済した日」とは限りません
「最後の返済から5年」と説明されていることがありますが、正確ではありません。起算点は権利を行使できる時、つまり返済期限が来た時です。多くの契約には、支払いを怠ったときに残額を一括で請求できるという定めがあり、この定めによって請求ができるようになった時点が起算点になることもあります。取引履歴や契約書の確認が必要です。
4. 時効が振り出しに戻る場合、止まる場合
期間の計算以上に大切なのが、この点です。それまでの経過が無駄になることがあります。
少しでも支払うと、振り出しに戻ります
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始めるとされています(民法152条1項)。これを更新といいます。
ご相談で多いのが、この 場面です。督促の電話を受けて、その場で「とりあえず1,000円だけ」と支払ってしまう。この一度の支払いが承認にあたり、期間がその日から数え直しになります。完成間近だった時効が、振り出しに戻ります。
支払いだけではありません。「分割にしてもらえないか」「もう少し待ってほしい」と伝えることも、借金があることを認めた行為として、承認と判断される場合があります。こうしたやり取りは、相手方に記録されていることがあります。
裁判を起こされると、完成しません
裁判上の請求や支払督促がされている間は、時効は完成しません。そして、確定判決などによって権利が確定したときは、その時から新たに時効が進行します(民法147条1項1号・2号、2項)。
さらに、確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものでも、その期間は10年とされています(民法169条1項)。過去に裁判を起こされて判決が出ている場合、5年では計算できません。
手紙が届いただけなら、6か月です
催告、つまり請求書や督促状が届いた場合は、その時から6か月を経過するまでの間、時効は完成しません(民法150条1項)。ただし、猶予されている間に再び催告をしても、重ねて猶予される効力はありません(同条2項)。督促状を何通も送れば時効 を延ばせる、というものではありません。
5. 手紙が届いたときにしてはいけないこと
場面 | 取扱い |
|---|---|
少額でも支払う | 承認にあたり、時効が振り出しに戻る可能性が高くなります |
「分割にしてほしい」と伝える | 同上。金額や支払方法の相談も、承認と判断される場合があります |
書かれた番号に電話する | やり取りの内容によっては承認と評価されるおそれがあります |
届いた書類を保管する | 問題ありません。封筒ごと、日付の分かる形で残してください |
裁判所からの書類を放置する | 最も避けるべき対応です(下記) |
ここで、はっきり区別していただきたいことがあります。債権回収会社からの手紙には、こちらから連絡しないのが安全です。しかし、裁判所から届いた書類は、絶対に放置しないでください。
訴状や支払督促を放置し、答弁書な どを出さないまま期日を欠席すると、相手方の言い分どおりの判決や仮執行宣言付支払督促が出てしまうことがあります。時効が完成していても、その主張をしなければ考慮されません。そして判決が確定すると、上記のとおり期間は10年になります。期限が短く定められていますので、届いた時点でご相談ください。
6. 援用の手続と弁護士費用
援用は、通常、内容証明郵便で通知して行います。いつ、どのような内容の通知をしたかを記録に残すためです。流れは次のとおりです。
届いた手紙や封筒、契約書など、手元の資料を確認します
取引の経過や過去の裁判手続の有無を確認し、完成しているかを検討します
完成していると判断できる場合、内容証明郵便で援用の通知を送ります
相手方が争わなければ、請求は止まります
費用は、2つの進め方からお選びいただけます
ご事情によって、弁護士にお任せいただく方法と、ご自身で手続をしていただく方法があります。
進め方 | 費用 | 向いている場合 |
|---|---|---|
弁護士に依頼する | 1社につき5万5,000円(税込) | 不安なく手続を進めたい場合 |
ご自身で書面を出す | 相談料と併せて1万1,000円(税込) | 費用を抑えたい場合 |
弁護士に依頼する場合
資料の確認から通知の作成・発送、その後の相手方とのやり取りまでお任せいただけます。費用は1社につき5万5,000円(税込)で、基本は会社数を掛けて計算しますが、複数社をまとめてご依頼いただく場合は割引いたします。内容証明の郵送料や資料の取得費用などの実費は別途必要です。
この費用は着手時に発生するもので、返金の対象になりません。相手方が時効の完成を争うなどして、支払義務の消滅を確認できなかった場合も同じです。その後に別の手続が必要となる場合は、対応範囲と費用を改めてご説明します。詳しくは借金問題の弁護士費用のページをご覧ください。
ご自身で書面を出す場合
費用のご負担が気になる場合は、相談料と併せて1万1,000円(税込)で、ご自身で作成していただける文案をお渡しする方法もご用意しています。お持ちいただいた資料をもとに時効の見通しをご説明したうえで、文案をお渡ししま す。発送はご自身で行っていただきます。
費用を抑えたい場合はこちらを、不安なく手続を進めたい場合は弁護士へのご依頼をおすすめしています。なお、相手方が時効の完成を争ってきた場合や、すでに裁判を起こされている場合は、ご自身での対応が難しくなります。その際は改めてご相談ください。
法テラスの利用を検討できることもあります。利用には資力などの要件と審査があります。法テラスの費用案内もあわせてご覧ください。
7. よくあるご質問
本物かどうか、自分で調べられますか
会社名が法務省の公表している許可業者の一覧にあるかどうかは、ご自身で確認できます。ただし、実在する会社と似た名前を使う例があるため、名称が似ているというだけでは判断できません。手紙の名目、連絡先、封書かはがきかもあわせてご覧ください。判断がつかない場合は、手紙をお持ちのうえご相談ください。
自分で内容証明を送ってもよいですか
ご自身で送ることもできます。ただし、時効が完成していない状況で援用の通知を送ると、借金の存在を認めた内容と受け取られ、かえって不利になるおそれがあります。過去に裁判を起こされていた場合は期間が10年になっているため、判断を誤りやすい場面です。当事務所では、相談料と併せて1万1,000円(税込)で文案 をお渡しする方法もご用意していますので、ご自身で出される場合もご相談ください。
信用情報はどうなりますか
時効の援用によって信用情報の記録がどう扱われるかは、信用情報機関や登録した会社によって異なります。援用すれば直ちに記録が消える、という性質のものではありません。ご自身の記録は、各信用情報機関へ開示を請求して確認できます。
家族あてに届いた場合、家族が援用できますか
援用できるのは、当事者と、保証人や物上保証人など権利の消滅について正当な利益を有する方です(民法145条)。ご家族というだけでは援用できません。亡くなった方あての請求は、相続の問題として別に検討することになります。
相談は電話でもできますか
当事務所では、電話による法律相談は行っておりません。ご予約はお電話でも承ります。県外にお住まいの場合や来所が難しい場合は、オンラインでのビデオ相談を承っていますので、LINEからお問い合わせください。
8. まとめ
債権が譲渡されるため、借りた覚えのない会社名で届くことがあります
債権回収会社は法務大臣の許可制で、許可業者の一覧は法務省が公表しています
実在する会社の名前をかたる請求もあります。心当たりがなければ連絡しないでください
期間が過ぎても、援用しなければ支払義務は消えません(民法145条)
少額でも支払うと、承認にあたり時効が振り出しに戻ります(民法152条1項)
過去に判決が確定していると、期間は10年になります(民法169条1項)
裁判所からの書類だけは、放置してはいけません
費用は、弁護士に依頼する方法(1社5万5,000円・複数社は割引)と、文案をお渡しする方法(相談料と併せて1万1,000円)があります
届いた手紙にその場で応じてしまうことと、裁判所からの書類を放置すること。この2つは、後から取り返しがつきにくくなります。
当事務所では借金問題に関するご相談を承っています。借金問題のご相談は30分5,500円(税込)です(初回無料相談は離婚・相続を対象としており、借金問題は対象外です)。届いた手紙は、封筒ごとお持ちください。差出人、日付、名目が確認できると、判断が早く進みます。
皆さまからのご相談をお待ちしております。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。 同じように見える事案でも、事情によって結論は異なります。実際のご判断にあたっては、 具体的な事情を踏まえた法律相談をご利用ください。
※記事は2026年9月12日時点の法令・実務に基づいています。その後の改正により内容が異なる場合があります。

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