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遺産分割の10年ルール 特別受益・寄与分はいつまで

FROM TOKUSHIMA MIRAI7分で読めます

遺産分割の10年ルール 特別受益・寄与分はいつまで

相続のご相談を受けていると、「親が亡くなってから何年も経つのに、遺産分割の話し合いが止まったままになっている」という状況にしばしば出会います。不動産の名義が亡くなった方のままになっていたり、相続人の一部と連絡が取りづらかったりして、手つかずのまま時間が過ぎてしまうケースです。

こうした長期間放置された遺産分割について、令和5年4月1日に新しいルールができました。民法904条の3という規定で、相続開始から10年が経過すると、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなります。

さらに、令和5年4月1日より前に始まった相続にも経過措置が置かれていますが、その期限が令和10年(2028年)の春に近づいています。何十年も前に始まった相続をそのままにしている場合、残された時間はそれほど長くありません。

この記事では、10年ルールの内容と、期限を止める方法、例外にあたる場合を整理します。

1. 遺産分割に「10年」という区切りができました

まず、誤解されやすい点を確認します。遺産分割の話し合いそのものに期限ができたわけではありません。相続開始から何年経っていても、遺産分割を行うこと自体は今もできます。

変わったのは、分けるときの「取り分の決め方」です。民法904条の3は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割については、特別受益(民法903条)と寄与分(民法904条の2)に関する規定を適用しないと定めています。

用語を整理しておきます。

  • 特別受益 相続人の一部が、生前に住宅資金や事業資金などの援助を受けていた場合に、その分を相続分の計算に反映させる仕組みです。

  • 寄与分 相続人の一部が、被相続人の療養看護や家業の手伝いなどによって財産の維持・増加に特別に貢献した場合に、その分を相続分に上乗せする仕組みです。

どちらも「法定相続分どおりに分けたのでは実情に合わない」という主張を支える制度です。10年を過ぎるとこの2つが使えなくなるというのが、今回のルールの中心です。

2. 10年を過ぎると何が変わるのか

10年を経過する前と後で、分割の基準がどのように変わるかを整理すると、次のようになります。

項目

10年を経過する前

10年を経過した後(原則)

分割の基準

具体的相続分(特別受益・寄与分を反映した割合)

法定相続分(遺言による指定があればその指定相続分)

「生前に多額の援助を受けた相続人がいる」という主張

できる

原則としてできない

「長年、療養看護を担ってきた」という主張

できる

原則としてできない

たとえば、法定相続分が3分の1ずつの相続人が3人いて、そのうち1人が生前に多額の資金援助を受けていた、という設例を考えてみます。10年を経過する前であれば、その援助を特別受益として計算に入れ、取り分を調整する余地があります。10年を経過した後は、原則として3分の1ずつを前提に分けることになります。

これはあくまで一般的な設例です。実際にどの範囲が特別受益や寄与分にあたるかは、援助の目的や金額、当時の家族の状況によって判断が分かれるところで、結論は事案ごとに異なります。

このような規定が設けられた背景には、時間が経つほど当時の資料や記憶が失われ、援助や貢献があったことを立証するのも、それに反論するのも難しくなるという事情があります。長期間放置された遺産共有の状態を整理しやすくするという狙いもあるとされています。

3. 期限を止める方法と、例外にあたる場合

10年の期限を止める方法は、はっきりしています。10年を経過する前に、家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停または審判の申立て)をしておくことです。

ここは誤解の多いところですが、相続人どうしで話し合いを続けていることや、他の相続人へ手紙や内容証明郵便を送っておくことでは、この期限を止めたことになりません。家庭裁判所への申立てが必要です。

例外として整理されているのは、次のような場合です。

  1. 10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所へ遺産分割の請求をしていた場合

  2. 10年の期間が満了する前6か月以内に、やむを得ない事由があって遺産分割の請求ができない相続人がいた場合において、その事由がなくなった時から6か月を経過する前に、その相続人が家庭裁判所へ請求したとき

  3. 相続人全員が、特別受益や寄与分を踏まえた分け方に合意している場合

3つ目については補足が必要です。10年を過ぎた後でも、相続人全員が納得したうえで具体的相続分に沿った分割をすること自体は妨げられないと解されています。ただし、あくまで全員の合意が前提です。相続人の一人でも「法定相続分どおりで」と述べれば、その主張が通ることになります。合意が得られるかどうかは相手方の意向次第であり、あてにできる前提とはいえません。

4. 令和5年4月より前に始まった相続には経過措置があります

この10年ルールは、令和5年4月1日より前に始まった相続にも適用されます。ただし、施行の時点ですでに10年が過ぎている相続について直ちに主張を打ち切るのは酷ですので、経過措置が置かれています。

経過措置の考え方は、次の2つのうち遅いほうまで猶予するというものです。

  • 相続開始の時から10年を経過する時

  • 改正法の施行の時(令和5年4月1日)から5年を経過する時

つまり、すでに10年をとうに過ぎている古い相続であっても、施行から5年、すなわち令和10年(2028年)の春ごろまでに家庭裁判所へ遺産分割の請求をすれば、特別受益や寄与分を主張する余地が残されていることになります。

この期限まで、残りおよそ2年です。申立ての準備には、戸籍謄本の収集、相続人の確定、遺産の調査といった作業が必要で、相続人の人数が多い場合や、連絡の取れない相続人がいる場合には、それなりの時間がかかります。期限の直前に着手して間に合うとは限りませんので、心当たりのある方は早めに検討されることをお勧めします。

なお、この期限の具体的な日付の数え方については、解説によって説明に幅があります。ご自身の相続がいつまでかを判断する際は、相続開始日を確認したうえで、個別に検討する必要があります。

5. あわせて確認したい相続登記の期限

遺産分割が終わっていない不動産をお持ちの場合、相続登記の期限もあわせて確認しておくとよいでしょう。

令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化され、不動産を相続によって取得したことを知った日から3年以内に申請することとされました。施行前に始まった相続についても、令和9年(2027年)3月31日までに申請する必要があるとされています。正当な理由なくこれを怠った場合には、過料の対象となることがあります。

遺産分割がまとまらず相続登記ができないという場合には、自分が相続人であることを法務局へ申し出ておく「相続人申告登記」という手続も設けられています。期間内に申し出れば、相続登記の申請義務を果たしたものとして扱われます。ただし、これは義務を果たしたものとみなす手続であって、遺産分割そのものが済んだことにはなりません。登記記録上の所有者は被相続人のままですし、遺産分割が成立した後は、その時点からあらためて相続登記の申請義務が生じるとされています。

6. まとめ

  • 相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益・寄与分を主張できなくなります(民法904条の3、令和5年4月1日施行)

  • 10年を経過した後は、法定相続分(遺言による指定があれば指定相続分)を基準に分けることになります

  • 期限を止めるには、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の請求をしておく必要があります。話し合いや内容証明郵便では止まりません

  • 令和5年4月1日より前に始まった相続には経過措置があり、令和10年(2028年)の春ごろが一つの区切りになります

  • 相続人全員の合意があれば、10年経過後も具体的相続分に沿った分割は可能と解されていますが、全員の合意が前提です

長く手つかずになっている遺産分割は、その間に相続人がさらに亡くなって関係者が増える(数次相続)ほど、話し合いも手続も複雑になっていきます。時間の経過そのものが不利に働きやすい分野です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。 同じように見える事案でも、事情によって結論は異なります。実際のご判断にあたっては、 具体的な事情を踏まえた法律相談をご利用ください。
※記事は2026年8月14日時点の法令・実務に基づいています。その後の改正により内容が異なる場合があります。

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