OFFICE JOURNAL ARTICLE

別居中の生活費はいくら?婚姻費用の決まり方

FROM TOKUSHIMA MIRAI6分で読めます

別居中の生活費はいくら?婚姻費用の決まり方

別居を始めたものの、相手が生活費を入れてくれない。あるいは、家を出た配偶者から生活費を請求されて戸惑っている。離婚のご相談では、こうした「別居中のお金」が最初の壁になることがしばしばあります。

離婚そのものの話し合いは長引くことがありますが、その間の生活は待ってくれません。ここで使えるのが婚姻費用の分担請求です。

この記事では、婚姻費用の金額がどのように決まるのか、いつから請求できるのか、話し合いがまとまらないときにどうするのかを整理します。

1. 婚姻費用とは(養育費とはどう違うのか)

民法760条は、夫婦は資産・収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すると定めています。この「婚姻から生ずる費用」が婚姻費用です。

具体的には、衣食住の費用、水道光熱費、医療費、子どもの養育費や教育費などが含まれます。夫婦は互いに同じ程度の生活を保持する義務を負うと考えられており、別居していても、婚姻関係が続いている限りこの義務は残ります。

養育費と混同されやすいので、違いを整理しておきます。

項目

婚姻費用

養育費

対象となる期間

別居中から、離婚成立または同居再開まで

離婚後

含まれるもの

配偶者の生活費と子どもの費用

子どもの費用

主な根拠

民法760条

民法766条など

配偶者の生活費が含まれる分、婚姻費用は養育費より高くなるのが通常です。離婚が成立すると婚姻費用の支払義務はなくなり、養育費に切り替わります。

2. 金額はどう決まるのか

実務では、家庭裁判所が用いる算定表を目安にします。この算定表は令和元年12月に改定されたもので、裁判所のウェブサイトで公開されています。16年ぶりの改定であり、それ以前の表とは金額が異なります。インターネット上には古い表の解説も残っているため、確認する際は改定後のものかどうかに注意してください。

算定表は、次の3つが分かれば読めるようになっています。

  • 支払う側(義務者)の年収

  • 受け取る側(権利者)の年収

  • 子どもの人数と年齢(0歳から14歳までと、15歳以上で表が分かれます)

年収は、給与所得者であれば源泉徴収票の支払金額、自営業者であれば確定申告書の課税される所得金額を基礎とするのが一般的です。給与所得者と自営業者では、表の中で見る欄が違います。

ただし、算定表はあくまで標準的な事案を簡易迅速に処理するための目安です。私立学校の学費、住宅ローンの負担、持病による高額な医療費といった事情があるときは、表の金額から修正を検討することになります。どこまで考慮されるかは事案によって異なり、算定表の額がそのまま認められるとは限りません。

3. いつから、いつまで請求できるのか

実務上、婚姻費用の分担義務が生じる時期は請求した時からとされるのが一般的です。調停を申し立てた場合には、申立てをした月から計算されることが多いといえます。

ここは実際に差が出るところです。別居してから何年も経って請求しても、過去にさかのぼって全額が認められるとは限りません。「そのうち話し合おう」と考えているうちに時間が過ぎると、その間の分を受け取れない可能性があります。別居した段階で、まず請求の意思をはっきり伝えておくことが大切です。

内容証明郵便などで婚姻費用の分担を明確に求めていた場合には、その時点を始期と考えるべきだとする裁判例もあります。もっとも、時期をはっきりさせるという意味で確実なのは、家庭裁判所へ調停を申し立てることです。

終期は、離婚が成立するまで、または別居を解消して同居に戻るまでです。

4. 話し合いがまとまらないときは

当事者の話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てます。調停でも合意できないときは審判に移り、裁判官が金額を判断します。

離婚調停と同時に申し立てることもできます。離婚の話し合いは時間がかかることが多いため、生活費の確保を先に手当てしておく意味があります。

取り決めたのに支払われない場合には、次のような手段があります。

  • 履行勧告 家庭裁判所から相手方へ、支払うよう促してもらう手続です

  • 強制執行 調停調書や審判書があれば、給与や預貯金の差押えを申し立てられます。婚姻費用のような扶養義務等に係る債権では、給与の差押えができる範囲が通常の債権より広く、手取額の2分の1まで認められています(民事執行法152条3項)。また、将来支払われる分についてもまとめて差押えができるとされています

いずれも、金額と支払方法を書面ではっきりさせておくことが前提になります。口約束のままでは、これらの手続を使えません。

5. 請求が認められにくい場合

別居の原因を作った側(有責配偶者)からの請求については、信義則や権利の濫用という考え方から、金額が減らされたり、認められなかったりすることがあります。たとえば、不貞行為をして家を出た配偶者が、残された相手に自分の生活費を請求するような場合です。

もっとも、子どもの生活費にあたる部分については、子どもに責任はないことから別に考えるべきだとされています。どの範囲がどのように扱われるかは事情によって異なりますので、事案ごとの検討が必要です。

これは一般的な説明であり、個別の事案の見通しをお示しするものではありません。

6. まとめ

  • 婚姻費用は、夫婦が婚姻から生ずる費用を分担する義務です(民法760条)。別居していても、婚姻が続く限り残ります

  • 金額は家庭裁判所の算定表が目安になります。令和元年12月に改定されており、それ以前の表とは金額が異なります

  • 始期は請求した時からとされるのが一般的です。別居から請求までが空くと、その間の分を受け取れないことがあります

  • 話し合いがまとまらないときは調停を申し立て、決まらなければ審判で判断されます

  • 取り決めを書面にしておけば、履行勧告や強制執行を使えます

  • 別居の原因を作った側からの請求は、減額されたり認められなかったりすることがあります

別居中の生活費は、離婚の条件そのものよりも先に決めておく必要がある問題です。手元の資金が尽きてから交渉を始めると、条件面で不本意な判断をせざるを得なくなることもあります。

当事務所が離婚について取り扱っている業務の範囲は離婚・男女問題の取扱分野のページに、費用の考え方は離婚事件の弁護士費用のページに掲載しています。離婚については、事前にご予約のうえご来所いただく方を対象に、初回のご相談を無料でお受けしています。

皆さまからのご相談をお待ちしております。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。 同じように見える事案でも、事情によって結論は異なります。実際のご判断にあたっては、 具体的な事情を踏まえた法律相談をご利用ください。
※記事は2026年8月27日時点の法令・実務に基づいています。その後の改正により内容が異なる場合があります。

ご相談・お問い合わせ

ご相談は事前予約制です。電話・LINE・フォームからお問い合わせください。